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第17回アーテックス帰国展稲垣智子
-展覧会記録-

展示室A

展示風景(展示室A)

《Spaceless Spaces》2007
ネオン・ガラス
サイズ可変(124×4×4cm each)

《Sand Sculpture》2007
砂・ガラス・ステンレス
サイズ可変
ネオン管を使った作品
《Spaceless spaces》と《Sand sculpture》の2点で構成しました。
48本のネオン管を、等間隔で2段につるすという新しい方法を試みました。

作家が、ガラス管に息を吹き込むことで作られた作品です。

画面奥に見える台座の上にある砂山から砂をすくい、画面手前に見えるガラス管に砂を注ぎ入れる事ができます。

注ぎ入れられた砂は、さらさらと流れ落ちていき、台座の上に堆積されていきます。

展覧会最終日には、台座から砂が流れ落ち、床にも小さな砂山ができていました。


展示室B

展示風景(展示室B)

《Sign #1〜7》2007
ネオンチューブ・鉄
サイズ可変
新しい展開による作品
《Sign #1〜7》で構成しました。

こちらも、作家がガラス管に息を吹き込むことで作られた作品です。

窓ガラスには、作品が映り込んでいます。

窓を背に撮影した展示風景です。展示室の床にも、ネオン管の光が反射しています。

イベントの様子
○関連イベント【ミニマル・フィジカル・オーディオ・ナイト】
12月14日(金) 午後7時30分— @展示室A

「美術批評家・尾崎信一郎氏×国谷隆志」

「小島剛氏と毛利桂氏による即興の演奏」

「花沙氏によるダンス」

来場者の声(アンケートから)

・ 不思議な感覚でした。何かがすごくおもしろいと感じました。赤いA室は、めまいがするくらい強烈で、言葉にならない“モノ”を覚えました。

・ ゆうに満足。異質で希望的で、沈黙な思考の中にあるような空間に満足。

・ ネオンの方が印象的だったのに、後で思い出すのは、流れる砂のたたずまいばかり。

・ こぼれ落ちる砂によって、円錐が形成されたり、崩れる様を見て、秩序と混沌とのバランス、秩序がはらむ混沌(?)等、いろいろと感じるおもしろい体験ができました。

・ 大地もひと粒ずつの砂から重なりあって、時間をかけてゆっくりできるんだなと感じました。

・ 長居したくなる空間でした。

・ 素敵なカタログをありがとう。


展覧会を終えて
本展覧会は、現代美術センターの二つの展示室(A・B)を使った新作3点による展覧会となりました。 

展示室Aは、《Spaceless spaces》と《Sand sculpture》の2点で構成しました。《Sand sculpture》は、観者が自らガラス管に砂を注ぎ入れるという行為により、時と共に砂が流れ落ちてゆく様子や、堆積されていく円錐状の砂山が、日々感じている以上に確かな「時間」の流れを意識させるかのような作品です。 《Sand sculpture》の後方には、天井からつられた赤く発光するネオン管(24本×2段)が、壁面を覆うかのようなスケールで展開した作品《Spaceless spaces》があります。《Spaceless spaces》は、展示室内を充たしている淡い光の効果や、ひとつとして同じ形状をもたないぼこぼことしたネオン管が連続してつられている構造により、視点の定まらない不思議な感覚をおこさせます。会場に訪れた多くの観者は、最初は「何を見れば」いいのか戸惑いながら、一カ所に佇み、ゆっくりと時間をかけてぼんやりと「何かを眺めている」ようでした。ある人は、「この作品は、風景を眺めているようだ」と言われました。確かに、一カ所に佇みぼんやりと「見る」という行為は、空間に身をまかせ「からだ」がもつ全ての感覚のスイッチを切り、風景を「眺める」という行為に似ているのかもしれません。

 《Spaceless spaces》は、私たちの時間を心地よく奪っていきました。また、ふとしたきっかけで、作品に近寄ったり、作品の向こう側に回り込むという私たちの行為によって、作品と自身が同じ空間に「在る」ことをはっきりと確認できたのではないでしょうか。そして、「眺める」から「見る」といった行為へと移る瞬間を体感できたのではないでしょうか。 

展示室Bは、国谷の新しい展開による作品《Sign》(7基)によって構成しました。これは、台座をもつ鉄製の支柱の先に、作家の腕の動きが見えるような曲がりくねったネオン管が掛けられた作品です。また、青白く発光する光は、《Spaceless spaces》のぼんやりと赤く発光する光に包み込まれる印象とは違い、空間と私たちを分断するかのような印象を与えます。それは、作品の形状はもちろんのこと、床に鈍く反射する光や、作品が窓に映り込むことで、空間そのものの印象が刻々と変化し、掴みどころのない距離感を私たちに与え続けるからではないでしょうか。また、展示室の床のカーペットを剥がす事で、足元が不安定になったことも、大きな一因となったのではないでしょうか。しかし、その違和感以上に「何なのか確認したい」という欲求を想起させる展示は、多くの観者に行動を促します。私たちはコツコツと靴音を響かせながら、展示室内を歩き回ることで、目の前に在るものが何であるかを観察し把握し、最初に感じた感覚のズレを修復しながら、均衡を取り戻そうとしていたのではないでしょうか。

 二つの展示室(A・B)を使った新作3点による本展覧会は、日々の中で見落としがちな時間や空間に対するわたしたちの感覚を、改めて確認するきっかけを与えてくれました。作品を前に戸惑い、気づかないうちに空間に内包されたり分断されたりした後に、自身を取り戻す感覚。それは、暗い室内から明るい外に出たときに起こる目眩のあと、瞬時におとずれてくる現実感を回復する感覚に似ているかもしれません。 

最後になりましたが、ご来場いただきましたたくさんの皆様、ご協力いただきました方々に、お礼を申しあげます。ありがとうございました。
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